言及兼杞憂

脳が溶けてきたので備忘録

若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!(漫画版)

 

 異世界系ジャンルを初めてちゃんと読んだ話。

 

原作者の森田季節さんの著作は、デビュー作の『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』が非常に面白く、その後も百合姫でやってた小説等をちょこちょこ読んでいた。

ベネズエラ~』のようなしっとりとした文学よりのモノが書ける一方で、だいぶラノベラノベした作品も量産できるという、器用な作家さんという印象である。

 

最近は流行の異世界系でもガンガン活躍していて、時流に合わせるのが上手い人だなーと遠目から眺めていた。

 

そんな折、角川の大規模セールで漫画版『若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!』1巻が無料になっていた。

遠目から見ていたとはいえ、私はこの手の異世界系といわれるジャンルを、大敬遠してきた人間である。多少の抵抗はあったけれど、「まぁ貴方ほどの方がやるなら…」と、なんとなく手にとってみた。

 

結果として、今手元には漫画版の全巻が揃っている。

 

実際、想像する異世界系小説から逸脱しない内容だった。

 

物語に大きな起伏は一切ない。最底辺から急上昇したあとは、業績は緩やかなうなぎのぼりを続けていく。展開はトントン拍子で、溜めなんてものは皆無である。

主人公は実は類まれな才能があり、今まで劣等感を抱いていた連中を序盤で圧倒する。

主人公に集うキャラクタは全員美少女で、皆が彼の才能と人格に惚れ込んでいるハーレム状態。なんだったら全員肉体関係持つことに一切の躊躇がない。

そして作品の個性は、全部タイトルで言ってる通りで、それ以上でもそれ以下でもなかった。

 

予想からまったくはみ出ない内容に「いやー異世界系ってやっぱこういうのがメジャーよな~~」と、正直呆れたところはあった。こんな全部うまくいく話、なにがおもろいねんと、今でもちょっと思っている。

 

けれど不思議と嫌悪感はなく、むしろなんだか愛着が湧いている自分がいた。

 

異世界で幅を利かすブラック企業を、ホワイト化が進む黒魔法の会社が駆逐していくストーリー自体は確かに気持ちが良い。

主人公はじめレギュラー陣は全員いいヤツで悪感情持つ点が一切ない。

主人公が今までの不遇を一気にまくり、以降は順風満帆な人生を送るのは安心できる。

そしてエッチである。

作画担当の方も、込み入った線ははなから放棄してるのか、全てをデフォルメ効かせたデザインで通しており、物足りなさは多少あるが絵自体は安定してて読みやすい。

 

コレが小説、ひいてはライトノベルと同列のコンテンツとして並ぶのは、平成ヒトケタ世代(主語デカ男)してはまだ受け入れがたいものがあるけれど、でも有り様は理解できた。

 

今までのエンタメ小説が料理なのだとしたら、この手のジャンルはサプリメントなのだ。

 

即効性があり、確実に栄養が補給できて、余計な時間を取らせない。

読書は心の栄養という言葉を小学生の頃に聞いたけれど、その理屈の行き着く果てがきっと此処なのだ。

(お前が読んでるの漫画版やんけ、という指摘には何も反論できんけど)

 

異世界系は、かつてちょっとつまみ食いして、あまりのあんまりさに読むのをぶん投げたことがあって、以降背を向け続けていた。

けれど、ちゃんと吟味すれば自分の心の健康をサポートする、サプリメント的な読書として便利なジャンルなのかも、と考えが改まった。

今後は食わず嫌い、もとい服用もしないうちからさも効果がないようなネガティブキャンペーンうつのはやめ、心の健康状態と相談して、ちょっとずつ摂取してみたいと思います。

 

今回は漫画版だったけど、原作のニュアンスも気になるので、今度また読んでみようかな。あと、アニメが始まる「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」も気になるところ。

 

 

 

 

 

 

死神はきょうも舟を漕ぐ

 

 

 

久しぶりに東方二次創作を読んだ。

最近の東方projectは公式での展開をガンガンに進めていて、もはやアニメに手を付けてないほうが不自然な状況になってきているけど、今日読んだのはそんな公式が出した東方project二次創作シリーズ、というブランドの一冊。

小町主役の二次創作漫画と、茨華仙の公式漫画がセットになっているという、なんかこう、いいんかそれ!? みたいな売り方をした本だけど、内容自体は勿論良かった。

自分の立場をちょっぴり踏み外して、おせっかいを焼いてしまうお人好しの話は、あらゆるところで見覚えがあるけど、やっぱり面白いし、飽きない。

東方において、本作の小町のような、わかりやすく人間味の溢れた言動はやっぱ二次創作ならではの醍醐味だよなーと思う。(ZUN氏が手掛けると、みんな多かれ少なかれ「打算」を抱えている印象があるので)

現在の東方project公式の盛り上げ方にはいまひとつ乗り切れてないところがあるものの、手広く展開を始めたことで良い作品がどんどん出てくる分には拒否する理由はないし、今後も楽しみ。